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七つ森 ツキノワグマはカモシカの死体を占有した

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本記事には森で死んだケモノとそれを喰いに来るケモノの写真&動画が掲載されています。


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身近な里山として多くの人に親しまれている「七つ森」。
僕の家からは車で10分少々で登山口まで行くことが出来る。

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人間の生活圏から、これほど近くの里山だけれど・・・野生はうごめいている。
ただ、普段目にする事もなく知らないだけ。








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早朝に七つ森あたりをウロウロするのは僕にとって日課のようなもの。
11月8日朝、カモシカの死体を見つけた。
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目立つ外傷はなく、角の擦り減り具合や毛並み、顔や口の周りに皮膚の突起もなく(パラポックスウイルス感染症の疑いはない)老齢のカモシカの自然死と判断した。
注)カモシカは特別天然記念物であり、死亡個体が発見された時には自治体の教育委員会を通じて文化庁に「滅失届」の提出が義務付けられている。
なので、大和町教育委員会には報告済み。「現場に案内してほしい」と言われたけれど、「日程を調整し同行が可能になる頃には既に死体は無くなっていると思いますよ」と答えた。僕がカモシカの死体を見つけたのは2回目、前回の観察では最終的にツキノワグマが持ち去った。

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すぐさまトレイルカメラを設置し観察を開始する。事の成り行きは大体の予想がついていて、僕の関心は最終的にツキノワグマが来るのか?その姿をカメラが捉える事が出来るのか?この2点だった。

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滅失届を作成しやすいように、大きさや体重を記憶する。目測で体長1.2m体高0.7m体重25~28㎏、普通の成獣の大きさ。

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同日8時20分から観察を開始した。

観察開始から2日後、死亡推定から3日後にハクビシンが現れた。
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数日間は誰もやって来ないと思っていた。僕の臭いが濃く残っているだろうし、ある程度腐敗が進んでからしかほかのケモノは寄ってこないだろうと思っていた。最初にやって来たハクビシンは周りの臭いを嗅ぎ、カモシカの様子を確認するのみで食らいつくことはなかった。

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次に来たのはキツネ。このキツネも様子伺いに終始し、少し齧ってみた程度で立ち去った。

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タヌキも臭いに警戒しているのか、すぐには食いつかない。

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再び現れたハクビシン。一週間が経過し、僕の臭いが薄れたのか?違和感はあっても肉の誘惑が強かったのか?恐る恐る噛り付いていた。

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テンもやって来た。臭いを嗅ぎ周辺を歩き回り、ちょっとだけ齧って立ち去った。

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再びキツネ。どうも最初に来たキツネとは別の個体のような気がする。尻尾の色と形が違う。

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タヌキは上記以外のカットには一番多く写っている。ケモノが寄って来はじまってから100カットくらい記録していたけれど、その大部分はタヌキ。腐敗が進み警戒心も取れたのか?2匹で連れだって食っては去り、数十分後にまた現われ貪り食う姿が繰り返し記録されていた。

そして設置から10日後、そろそろかと思い現場に行った僕の目に映ったものは・・・・
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カモシカは無くなり、知っているからこそ分かる僅かな痕跡。

ヤツが来た!

まだ近くにいるかも知れない!

死んだカモシカを自分のものとして占有し、それを守ろうとするツキノワグマに遭遇してしまったら・・・ヤバイ!
クマ撃退スプレーのロックを外しトリガーの感触を確認し、胸の鼓動がジンジン伝わる手で大急ぎでカメラを回収し逃げるように車へと戻った。

ドキドキしながらカメラの蓋をはずし、記録をモニター画面で確認する。


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身近な里山としてトレッキングやトレランに人気の七つ森。

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その登山道から数十メートルしか離れていない場所で展開する野生の営み。僕らは知るべきだと思う。

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上記の写真を切り出した動画を1分44秒にまとめてみました。




この観察記録から言えることは、(私独自の考えも含め)

①人家からすぐ近くの里山でも様々な肉食獣が生息していて、死んだケモノはほかのケモノの貴重なたんぱく源になる

②ツキノワグマの腐肉嗜好と独占欲。前回の観察でも同様に腐敗が進んでからしかツキノワグマは現れず、占有し持ち去った。

③タヌキと比較するとハクビシン・キツネ・テンの貪欲さは少なく、身体能力に優れ狩猟スキルの高い動物は死肉よりも生肉(キツネはネズミを捕って丸呑み)を好む?

④クマも他のケモノも肉付き毛並みが良く、豊富な栄養源を確保している?これはイノシシの台頭が関係しているのではないか?ここ数年のイノシシの生息拡大は著しく、一定数でイノシシは死亡する訳で、これをエサとしていると考えられないか?

⑤ツキノワグマの体型を見る限りエサ不足とは考えられず、巷で言われているブナの実が凶作だから山で不足しているエサを求めて人里付近に出没が増えるという話は違うんじゃないか?(そもそも、この辺にブナ林はないです)


今、思いつくのはこれくらいですが、皆さんはどのように捉えられましたでしょうか?

ご意見・ご質問などコメントをお寄せいただければ幸いです。




by mt1500funagata | 2021-11-21 20:44 | 七つ森界隈 | Trackback | Comments(0)