人気ブログランキング |

升沢小屋の草刈りは雨

ここのところ、山に登ることを目的として船形山に行くことがなくなったように思う。
升沢小屋のメンテだったり、ブナの会の薪荷揚げだったり、個人の楽しみとしては新たな出会いと発見を求める探検だったり。
c0294658_21555529.jpg
今日はエンジン草刈り機を担いで升沢小屋へ。
c0294658_21555599.jpg
この草刈り機は草を刈るだけのコンパクトで軽いものだけれど、登山道に覆いかぶさるチシマザサなどを刈るためのパワーのあるものは倍近い重さがあるのですね。

登山道整備の人たちは、そんな重い草刈り機を担いで登って来て、さらに作業をしているのですね。ご苦労様なことで感謝感謝ですよね。登山道がヤブっぽいとか刈り払いをしていないとか、言うだけだったら簡単だけれど、、、。自治体で予算をつけてやればいいじゃん!やる業者がいれば簡単だけれど、、、。業者さんにとっても作業員の高齢化が進み、なかなか実施できないのが現状のようです。ボランティアとは言わないけれど、登山愛好者が作業員として参加するってことも考えたらいいんじゃないかと思う。

僕が町から委嘱を受けている管理業務は小屋のメンテだけであって、草刈りは含まれていない。本来は除草作業として入札をし業者を選定して行われるものだけれど上記とおり実施しきれていないので、せめて小屋の周りだけでも僕がやる。

c0294658_22293030.jpg
升沢小屋に着くまでは蒸し暑く、重い草刈り機を担いで汗だく。エンジンを掛けて刈り始めたところで雨が降り出した。

c0294658_22293928.jpg
草刈りそのものはそれほど時間がかからないけど、刈った草を集めて小屋の裏に捨てに行くのが大変。一人だったらたっぷり半日がかりの作業になる。昨年のし尿オガクズ降ろしの時のように、協力を呼びかけたら何人かは集まってもらえるだろうか?4~5人でやればほんの数時間で終わると思う。

夕方、カッパを着て下山した。カッパ歩きは何週連続になるのだろうか?


保野川渡渉点にあるブナの倒木。
c0294658_23275083.jpg
僕はこの木に「旅をするブナ」と名前をつけて呼んでいる。

3年前の秋にブナの会の機関紙「ブナ通信」に寄稿した一文ですが、良かったら読んでみてください。
===========
◆◆◆旅をするブナ◆◆◆

大和町 千葉

10月2日の山頂避難小屋への薪の荷揚げ、升沢避難小屋のし尿下ろし。参加された皆さん大変お疲れ様でした。
升沢小屋からの帰り道、保野川の渡渉点に流れ着いていたブナの大きな流木を覚えていますか?8月下旬にあの流木はありませんでした。初めて見たのは9月21日。ということは北日本に甚大な被害をもたらした台風10号による沢の氾濫で流されて来たと考えられます。沢を跨ぐ巨大な流木に触れて、その上に立ってみる。そして沢の上下流や辺りのブナの森を眺めてみると、ひとつの物語が出来上がる。

======

アラスカの動物学の古典 ”Animals of the North”(極北の動物誌)という一冊の本がある。かの星野道夫は「それは生物学の本というより、アラスカの自然を物語のように書き上げた名作である」と評した。

その第一章「旅をする木」
それは早春のある日、鳥がついばみながら落としてしまうある幸運なトウヒの種子の物語。川沿いの森に根付いたトウヒは、いつしか一本の大木に成長する。長い歳月をかけて、その木が川岸に立つ時代がやって来る。ある春の雪解けの洪水にさらわれたトウヒの大木は、ユーコン川を旅しベーリング海へ、そして北極海流によってアラスカ内陸部で生まれたトウヒの木は遠い北のツンドラ地帯の海岸へとたどり着く。打ち上げられた流木は木のないツンドラでひとつのランドマークとなり、キツネの匂いつけの場所となった。冬のある日、キツネの足跡を追っていたエスキモーはそこにワナを仕掛けるのだ・・・一本のトウヒの木の果てしない旅は、原野の家の薪ストーブの中で終わるのだが、燃え尽きた大気の中から生まれ変わったトウヒの新たなた旅も始まってゆく・・・。

僕は今まで、この物語を何度読み返したことだろう。
船形山登山道、大滝キャンプ場~三光の宮間の保野川渡渉点に流れ着いたブナの大木。僕はこの流木となったブナに「旅をする木」を連想した。

=====

何百年か前、保野川を見下ろす崖の際に落ちたブナの実は、いくつかの偶然が重なって発芽し、様々な幸運に恵まれて大木へと生長した。ツキノワグマは木に登りアカネズミは落ちた実を巣に運び、動物や鳥たちは何世代にも渡って、このブナから食の恩恵を受けたことだろう。
保野川に面した崖は数年に一度の大雨や地震によって少しずつ浸食し、崖際のブナの根の下には空洞が出来るまでになった。老木となったブナの樹上の洞には鳥がヤシャビシャクの種を残した。ヤシャビシャクが発芽する頃、大雨によって緩んだ崖は土砂崩れを起こし、ついにブナの大木は保野川へと滑り落ちる時を迎えたのである。
倒木となったブナの大木には、まだ緑色の葉っぱが残っていたけれど紅葉し落葉することなく枯れた茶色の葉っぱを付けたまま雪に埋もれていった。
崖と河原の間で数年間留まっていた倒木は或年の大水で浮かび上がり沢を跨ぐような格好で流木として移動した。水流でブナの樹皮は剥がれ枝の折れ口は磨かれて、太い幹と一番下にあった太い枝、根の一部だけが黒光りする巨大なオブジェとなった。麓からやってくるキノコ採りのおんつぁんは巨大な流木を乗り越えるのに苦労して舌打ちをしたけれど、キノコが生えていやしないかと下側を覗き込むのは怠らなかった。

平成27年9月に記録的な大雨がブナの森に降り注ぎ、想像を絶するような増水と水勢で巨大な流木は登山道の渡渉点の上流50mの辺りまで流されてきて、さらに28年9月の台風で渡渉点まで移動した。

これからどれくらいの時をあの場所に留まるのだろう、渡渉に都合の良い太い手すりとなって登山者の支えになるだろうか、流されてきた岩が下に詰まり小さなダムができて渡渉に向かない場所になるかも知れない。でも、いつの日かには腐食し分解して小さな木片や木くずとなって色麻大滝を下る。そして保野川から鳴瀬川へ、大崎平野を静かに流れて仙台湾で太平洋に流れ込む。
何百年か前に船形山の森で発芽したブナは、これから何百年か先には天然の有機肥料として海の生物や植物を育む。途中で水路に引き込まれて三本木の田圃を潤し稲を育むかも知れない。そんな時が必ずやってくるのだ。

保野川渡渉点に流れ着いたブナの大木、今は長い長い旅の途上なのである。



トラックバックURL : https://bunatayori.exblog.jp/tb/30371558
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by aki at 2019-07-21 11:22 x
千葉さん、草刈りありがとうございます!

手伝いをやりたいと思ってる人は、けっこういると思いますので、千葉さんのこのブログで”作業の手伝い求む”とドンドン呼びかけてください!

次回は、僕も参加させてください!
Commented by 田澤 at 2019-07-21 13:48 x
こんにちは。
草刈り機はバッテリーではもたないのでエンジンタイプなんですね。
家の小さい庭をバッテリー式の草刈り機で刈り込むだけで汗だく、達成感に浸っている私が恥ずかしく思いました 笑

しかし、渡渉点の流木から素敵なお話をありがとうございます。今年6月に船形山北方の沢筋で、土から出たばかりでまだ殻を被ったままのブナの芽を眺めて腰を下ろし、辺りの大木を見上げて感慨にふけっていたのを思い出しました。
Commented by mt1500funagata at 2019-07-21 21:08
> akiさん
本文にも書きましたが、登山道整備は人手不足などでどんどん後回しになって行く傾向だと思います。自分たちが楽しませてもらっているお返しという意味で、小屋周辺に限らず登山道全体を役所に頼らず自分たちできれいにしましょうよ!って呼びかけたいところであります。
鎌と枝切狭とノコギリを常にザックに忍ばせ、ちょっと気づいたところで、ちょっとだけでも笹を刈る。僕が尊敬するKさんのそんな行動を見習い実行して行きたいですね!
Commented by mt1500funagata at 2019-07-21 21:20
> 田澤さん
エンジン草刈り機は担ぎ上げるのは大変ですが、鎌で手作業で刈るよりずっと楽です。家で庭の草刈り用に買ったのですが、山小屋での使用頻度のほうが高くなってしまったようです。

僕は想像することが好きです。ちょっとした想像力を働かせれば、目の前にある風景、木や花、動物の痕跡がたくさんのことを語りかけてくるものです。今見えているものに時間という奥行きが生まれ、比例して自分の想いも深まるんじゃないかと思っています。
by mt1500funagata | 2019-07-20 22:30 | 船形山界隈 | Trackback | Comments(4)