ツキノワグマの肉食性の検証は失敗に終わった

ツキノワグマは食肉目(今は猫目という)の肉食獣であるけれど、木の実や新芽・草など植物性の食性もあることから、雑食性とされる。僕は、常々ツキノワグマって本当は肉が好きなのだけれど、ほかのケモノを捕食する俊敏さに欠けるから植物性の食べ物で補っているだけなんじゃないの?って思っている。

そこで、僕のクマ観察のフィールドである嘉太神のクマの道で、ある実験を試みた。
c0294658_22171247.jpg
クリとイノシシ肉を並べて、ツキノワグマはどちらを先に食うのか?トレイルカメラをセットして検証してみる。クリが実る今の時期まで待った。リンゴや桃などはこの辺のクマは食ったことがない訳で、下手にそれらの味を覚えさせるわけには行かない。肉もしかり。イノシシ肉は死んだイノシシは食ったことがあるはずで、豚肉とか鶏肉を使うのは避けるべきと考えた。

僕の予想は、早い者勝ちで先に肉を見つけたクマがガブリと食って、あとからやって来るクマは残りを舐めたりに匂いをかいだり、悔しそうな素振りで栗を食う・・・そんな感じだろうと思っていた。

しかし!予想とは全く違った結果で、この検証実験は失敗に終わった。
c0294658_22165581.jpg
ツキノワグマはすぐにやって来たけれど、匂いを嗅ぐだけで食うことはなかった。

c0294658_22165508.jpg
次に現れたクマも同じ。肉もクリも食わない。

c0294658_22165596.jpg
タヌキは、ちょっと口を付けて不自然さを感じたのだろう、匂いを嗅いだり近くをウロウロして一晩中様子伺いに終始した。肉をタコ糸で結び付けているのは、タヌキに持っていかれないようにするため。実はこの実験は2回目で、1回目はセットした後すぐにタヌキが肉を咥えて行ってしまい検証するべき肉がなくなってしまうと言う失敗をしたのだった。

c0294658_22165579.jpg
ハクビシンも食わない。

c0294658_22171277.jpg
テンも食わない。

c0294658_22171269.jpg
クリは全部ネズミに持っていかれた。

1週間に渡る観察だったけれど、結局のところ設置後5日以上経ってやっと3匹のタヌキが肉を食い終わらせた。
ツキノワグマは、肉もクリも口にすることはなかった。

1週間で200カットくらいの動画を記録したが、ほとんどはタヌキが周りをウロウロする姿。食べようかな~?でも、なんか変だな~?と声が聞こえてくるくらいの思案顔のタヌキだった。そんなタヌキの様子を見ていると、これが野生動物の慎重さで、車から投げられたものに抵抗なく食いつく餌付けされたキツネの不自然さがとても際立った。

もう、同じ実験はしません。今回限りのことです。

約2分の動画に編集してみました。↓↓↓


スマホの方はYouTube直リンクのほうが見やすいと思います
https://youtu.be/Tzesr08JKFc




[PR]
トラックバックURL : https://bunatayori.exblog.jp/tb/29744660
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by repertum at 2018-09-16 00:34 x
貴重な猪肉なのに食べないなんて・・・。もし例の施設の近辺でしたら、○○の方が食べ慣れているから、それを使えばあっさり食いついたかもしれませんね。ただ、どの熊もまず肉の様子を伺っていることから、肉と植物とどちらを好むかと言えば肉ではないかと思いますが。矢張り肉の方がカロリーが多いですから。
宮崎学さんの写真集「死」を借りて読んだことがありますが、狸が自然死したカモシカを食べる時でも最初は中々手を付けようとしない様子でした。まして自然にはあり得ない状態で置かれた食べ物には一層警戒するようですね。一方で一度手を付けて安全だと分かると大胆に食べるようです。
Commented by mt1500funagata at 2018-09-16 06:26
> repertumさん
今回の肉とクリどちらを食べるか?という実験は失敗に終わりましたが、この実験から見えてきたのは野生動物の想像以上の警戒心でした。おっしゃる通り自然にはあり得ない状態の食べ物ですからねえ。本文にも書きましたが、録画をチェックしながら考えたのは餌付けされたキツネでした。先日は窓から投げられたパンを間髪置かず咥え去る場面を見ましたが、それって本来の野生動物の姿じゃないとつくづく思いました。
実りの秋を迎え、クマの道を通るクマもめっきり少なくなりました。
Commented by くまぷー at 2018-09-16 20:26 x
落ちている木の実や果実って熊は食べるんでしょうかね。
栗とかどんぐりとかヤマブドウとか。

ドンプレ(どんぐりプレゼント)なる非常に怪しげな活動をしている熊保護団体があるようです。熊のことに携わっている人達から非難を浴びていますが続けているようです。その中で、熊は落ちている木の実等は食べないと言っている研究者の記述があったのですがちょっと気になる習性です。

小動物はむしろ落ちたのを採るのでしょうから、ネズミがもっていったけど、熊は取らなかったというのは、納得の結果ではあります。
Commented by lilywhitesquirrel at 2018-09-16 22:15
動画の編集によるものなのかもしれませんが 見ていると 肉よりも 肉の周囲(板やひもで縛られた岩もしくはひも自体)の臭いばかりに気を取られているように感じます。鳥の雛が巣から落ちたのを戻すと 人の臭いが付いていて 親は餌をやらないという話を聞いたこともありますし 動物の臭覚で イノシシの肉の臭い以前に人の臭いがあるのを取り除かないと 実験は難しいのかなーとの感想を持ちました。素人考えですが…。臭いに過敏な私ならではの…と 読んでいただければ 幸いです。
Commented by m tsunaco at 2018-09-17 01:07 x
チバさん待ってました!なんと意外な結末でしたね(゚ω゚)!ここのクマたちなら匂いがついていても人の匂いにも慣れているだろうと思っていましたが、やはり口に入れるものには特別警戒を示すのですね。
チバさんのおっしゃるとおり、あのキツネ兄弟の事が嫌でも浮かんでしまいました。。。

クマが好んで食べる栗やドングリはクマ棚が示すように青くて落ちる前のものがメインのように思います。堅果類は熟すと毒素になるタンニンの量が増えるとの事。知ってか知らずかは分かりませんが、もしかしたら、置いてある=落果してもう食べ頃ではないと判断して目もくれなかったのか?とも感じました。またシンプルに自分で採って食べるのが一番安心ということかもしれませんね。
猪肉も自然界で死骸を見つけるには、ある程度腐敗して匂いを放ってから=分解が進んで消化しやすくなってから食べる方が消化吸収率が高い?=消化し難い肉よりいつも食べてる身近なアレを優先させたのか?と考えたりしています。
クマの行動のほぼ全てを司るであろう『食べ物のクマにとっての旬と消化吸収効率』の面から、クマになったつもりで考えると今回の結果からそんな仮説を立てるのも面白いなぁと思いました(๑˃̵ᴗ˂̵)
長々とすみません!またお会いした時詳しくお話しさせて下さい(*^_^*)
Commented by mt1500funagata at 2018-09-17 05:48
> くまぷーさん
落ちている木の実→食べます。2015年10月に実際に落ちているドングリを拾いながら食べているツキノワグマを目視観察しています。その経験があったので今回クリを置いてみたのですけどね。11月には雪の下にあるドングリの落下実を食べている痕跡も多く見られます。

日本熊森協会が行っている、ドングリ撒きプロジェクトですね。熊森の活動や森山会長のお考えなどは共感し感動を覚えることも多いのですがドングリ撒きだけは反対です。先の記事で書いたブナの豊作凶作にも理由がある通り、コナラなどドングリの豊凶にも様々な自然界のバランスの上で何らかの理由があるのかもしれません。宮崎学さんもドングリに依存するのは熊だけじゃないことを理由の一つとして反対されているようです。くまぷーさんのおっしゃる通り、また今回の結果通り小動物は積極的に利用することでしょう。クマに与えるほどの量だったらネズミにとっては大量すぎます。ネズミ増える→キツネ・テン増えるetc様々な影響を及ぼす結果になると思っています。ドングリ撒きプロジェクトについて思っていることを言わせてもらうきっかけがなかったのですが、触れてもらえたことナイス!でした。

ちなみに熊森協会の森山会長も昨年8月21日に嘉太神を訪れ極太♀?と会っています。案内した知人から聞いていました。
Commented by mt1500funagata at 2018-09-17 06:05
> lilywhitesquirrelさん
久しぶりのコメント嬉しいです。
臭いですねえ~。肉やクリはカメラからほんの1mくらいのところで、僕の臭い(匂い?香り?)は完ぺきに残っていたでしょうね。ここのクマは恐らく僕の臭いを覚えていると思います。だって週3くらいでカメラのチェックに行くのですからね。童話的に考えると、「あの白いジムニーの奴こんなところにイノシシ肉置いて何か企んでるな?その手には乗らないぞー」って僕に言っているような態度にも見えますね。
目的としたものとは違う結果でしたが、色々なことを知ること(想像すること)ができる結果で面白かったです。
Commented by mt1500funagata at 2018-09-17 07:14
> m tsunacoさん
記録されたクマやタヌキなどの動きと餌付けキツネの動きの違いが明らかですね。キツネに関しては、今週の河北新報(日付未定)注視していてください。

熟すとタンニン増ですか?確かにクマ棚は熟す前に出来てますね。僕は落下する前は木に登れないと食えないからクマ棚が出来、熟し落下したら登って食うより落下実のほうが効率的に食えるので木に登らなくなるのでは?と考えていました。二つ前にコメントした通りドングリの落下実を拾い食いしているクマを見たことがありますし、春先には前年のブナ落下実を雪の中から拾って食いますからね。まあ、いずれにしても置いてあるクリには目もくれないということが分かったのは一つの成果でしょう。

おっしゃる通りある程度腐敗が進んでから食べるのでしょう。会った時話した通り今回は家で2日間熟成させてから置いてタヌキに持ち去られないように紐で固定し放置することで腐敗を進行させたかったのですけどね。

昨年4月にカモシカの死骸の前にトレイルカメラをセットして観察した記録を改めて見てみました。
4月16日 カモシカ死ぬ→夕方発見、血液の凝固状態から当日死亡と推定
18日10時ころ 目玉だけ消失を確認→トレイルカメラ記録開始
18日21時ころ タヌキ来る(食わない)
19日04時台 テン来る(食わない)
19日05時台 キツネ来る(食わない)
19日19時台 タヌキ来る(食わない)
19日21時台 タヌキ、カモシカの肛門付近食った様子
20日01時台 タヌキ来る(食わない)
20日02時台 タヌキ2匹 肛門付近中心に食う
20日03時台 タヌキ来る(食わない)
20日05時台 タヌキ来る(食わない)
20日18時~22時 タヌキ2~3匹 積極的に食う
20日22時~23時 キツネ来る(食わない)
20日23時以降 タヌキ最大5匹集まり貪り食う
21日04時台 キツネ来る(食ったと思われる)
21日05時台 テン 食う
21日07時 SDカード交換のため現場確認。内臓はほぼ無くなり骨露出など死骸の損傷激しい
21日11時第 テン 30分ほど居座り食いつ続ける
21日18時~20時 タヌキ・キツネ・テン 入れ替わり食いに来る
21日20時34分 ツキノワグマ初めて来て食う アバラ骨あたり?骨をかじる音も記録
21日20時49分 ツキノワグマ カモ
Commented by mt1500funagata at 2018-09-17 07:28
コメントの文字数オーバー?前コメントの続きです。

21日20時49分 ツキノワグマ カモシカの死骸を持ち去る。タヌキ見送る

この経験があったので、クマが食いに来るのは設置から3日後(解凍から5日後)くらいと目安を付けていたのですが、結局食いませんでしたね。思惑通りの結果は得られませんでしたが、僕にとっては貴重な資料・経験となりました。
ツキノワグマがカモシカ死骸を持ち去る動画は
https://bunatayori.exblog.jp/26696560/
2017年5月28日付の記事です。
Commented by m tsunaco at 2018-09-17 12:13 x
詳しくお返事いただきありがとうございます!
いや〜そうですよね〜ぇ(^◇^;)笑
冬眠直前には落ちてるドングリ食べてるし〜、お肉もこないだ2日ぐらい熟成させたっておっしゃってたしなぁ〜、、とか、自分で言っておきながらなんですが仮説立ててはすぐ打ち消してまた立てては打ち消しての繰り返しでした(^-^; 苦笑
人間が思っている以上に知能が相当高くて臨機応変に考えて柔軟に行動する、という事なんでしょうね。
警戒心が強いのに時に大胆な行動に出るし、こちらが小難しく考えていればいるほど意外とシンプルな理由だったりするのかもですね(^-^)
一筋縄では語れないからこそ野生動物には魅力があるんだろうなぁ♡笑
そう思えば思うほど、またキツネ兄弟の姿が頭に浮かんで切なくなりますね(T-T)
河北の記事、探します!
Commented by aki at 2018-09-17 18:27 x
千葉さん、その肉、血抜きした肉じゃ、ありませんか?血抜きした肉を動物たちが何だこれ?と思ったんじゃないでしょうか?
Commented by mt1500funagata at 2018-09-17 18:53
> akiさん
うーん、血抜きですか。そこまでは考えていませんでした。鮮度の高い肉よりも腐敗近い肉ってことは意識したのですけどね。いずれ何らかの人為的なことを警戒したのか?まあ野生動物のことは分からないから面白いってことでもありますね。
by mt1500funagata | 2018-09-15 23:03 | 野生動物との出会い | Trackback | Comments(12)