船形山、山頂よりもブナ平を選ぶ

晴天の船形山、升沢小屋のメンテに行って来た。
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山へ行くのに、うってつけのの好天に恵まれた一日を船形山の懐に抱かれる。

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升沢コース下部のブナの森は新緑に包まれていた。
前回、鳥居の笠木を乗せた橇を引いて登った道も、すっかり夏道となり鳥の声がそこいらじゅうに響き渡る。

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反骨の山男であり、船形のブナの森をこよなく愛したS木さんの魂が眠る旗坂平の下の岩。
草創期から長年に渡りブナの会の活動に積極的に関わり、原発事故に絡む指定廃棄物最終処分場の建設計画が持ち上がった際には「おらほの山の玄関口にゴミ溜め作るなんて、とんでもねえこった!」と怒りを露わにし反対運動に携わった。泉ヶ岳のトレラン大会のコースに氾濫原が入っていた時には、僕らは署名や投書でコース変更の要望を強力に申し入れたけれど、S木さんは主催者事務所に単身乗り込み直談判をやってのけた。絵にかいたような反骨精神を持ったS木さん。僕はここを通るたびに「ただよしさーん!」って声を掛ける。
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タムシバの花が咲くのも年々早まっているように思う。

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標高を上げるにしたがって、新緑の山から残雪の山へと姿を変える。
瓶石沢を渡る夏道は、もう少し上のほうだけれど、今日は三光の宮から一直線に歩いて来たのだ。上を目指せば良いというルートではないので、慣れないと迷いやすい。僕は三光の宮を少し越えたあたりで高度計を確認し、その高度を維持しながら西に向かって升沢小屋を目指す。そうしておけば地形図やコンパスと睨めっこすることなく、高度計付きの腕時計をちらちら見るだけで升沢小屋へ到達するのは容易なのである。

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夏道を忠実に辿るのとは少し違った方向から升沢小屋へ到着。
屋根にちょっとかかるタカラ森が可愛い。

こんな天気の山頂は眺めも良く、山頂を踏んだ満足度も高いだろう。
ここで山頂へ行かないことを決断するのは少々惜しまれるけれど、僕は山頂よりも小荒沢源頭部のブナ平へ向かうことを決めた。
山頂へは、今年も何度か行くことが出来るだろう。でもブナ平は今日を逃すと今年はもう行くことが出来なくなる。

小屋でのメンテ作業を終え、小屋で出会った方々と少し話し込んだ僕は、小屋を後にし三光の宮から花染山へ延びる尾根へと足を進めた。
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ブナ平に初めて足を踏み入れて以来、行かなかった年はない。年に複数回行き、テント泊で夜のブナ平に身を置いたこともある。
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今日の僕は山頂へ行くことよりも、ブナ平のブナに会いに行くことのほうが重要だった。

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ブナ平で一番太く、際立って大きさが目立つ「大王ブナ」。
何百何千年という森の時間の中で、ブナ平の主も世代交代を繰り返す。次代の主となるブナだ。

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長いこと主として君臨してきた「黒森ブナ」と「花染ブナ」。年々衰えが目立ってくる。
手前の黒森は最後の枝が折れ、朽ちる時が来るのはそれほど遠い先のことではないだろう。
僕は思う。「僕はこの黒森ブナが朽ちる時を見届けたい」

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今年のGWには、この二本のブナの根元でテントを張り夜を過ごしたいと思っていたのだけれど、家庭の事情はその時間を作ることが出来なかった。
そろそろ、このブナの語る声が僕にも聞こえても良いのではないかなあ、と思っている。

僕の中で、このブナは樹木としてのブナではない。
意思と記憶を持った魂が存在するブナなのである。

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小荒沢を覆っていた雪も消えて行き藪も密になり、ブナたちが人の訪れを拒む季節が近づいて来た。

僕は今日、ブナ平へ行かなければならなかった。


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Commented by H.Maz at 2018-05-01 10:13 x
こんにちは.
”小屋で出会った方々”のうちの一人です.あの時,ブログ教えて頂いたので訪ねました.船形連峰でもPから升沢小屋までツボを押さえた整備がされてて,個人的に一番のお気に入りです.またお会いした時には船形の楽しみ方を教えてください.
こらからもブログ拝見します!
Commented by mt1500funagata at 2018-05-01 21:52
> H.Mazさん
早速のご訪問とコメントありがとうございます。
小屋でのお話しの時間、とっても楽しいものでした。
新緑と残雪と青空!とっても良い船形山でしたね。また、どこかでお会いした時には色々と昔話に花を咲かせたいものです。ブログのほうも暇な時には覗きに来てくださいね。
by mt1500funagata | 2018-04-28 23:06 | 船形山界隈 | Trackback | Comments(2)