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ツキノワグマ 来たー!

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先日、ツキノワグマに先を越された、嘉太神地区にあるミズバショウの咲く湿地。
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また何度もやってくるだろうと思って、トレイルカメラ(自動赤外線センサーカメラ)をセットしておいた。
(写真は動画からの切り出し)
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やっぱり、やって来た。

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3月の末には、ミズバショウ見物に訪れる人も多い加美町の荒沢湿原でツキノワグマに男性が襲われて大けがをしたという人身事故が起こっている。
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僕は、こんな確実にツキノワグマがしょっちゅうやって来るところで、早朝から一人でウロウロして、トレイルカメラをセットしたり写真を撮ったりしているので、ここで過ごす時間の緊張感はハンパない。

もちろん僕は「クマがいる!」って前提で行っている訳だからそれなりの対策はしている。

場所に着いたら、車の窓を全開にして気配すら見逃さないよう神経を集中させて周辺の様子を伺う。
クマが見えず気配もなければ降車する前に何度かクラクションを鳴らして、僕がやって来たことをアピールする。
車の中で熊撃退スプレーとホイッスルを身に着けてから降車。
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車から出たら、勢いよくドアを閉めてホイッスルを一発ピーッ!続けて「ホーイ!ホイ!」とか大声で人間の声を聞かせる。
車のそばで熊撃退スプレーの抜き撃ちの動作を2~3回行ってから、いよいよ林の中に足を踏み入れる。
ラジオや熊鈴は持たない。身の回りで常に音が鳴っていれば、林の中の僅かな足音や枝や葉が擦れる音を聞き洩らし、気配を察知しずらくなるから。
目と耳、そして鼻。臭いを感じ取るのも大切なことで、直前にクマがいたのならば、その臭いは回数を重ねれば嗅ぎ分けられるようになる。
 
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カメラをセットしたり写真を撮っている間も、結構短い間隔でホイッスルを鳴らしたり声を上げたりしている。

以前、日本ツキノワグマ研究所の米田所長と電話で話していた時、「クマに襲われることを恐れていたら熊研究者とは言えない」って言われたけど、それってご自分のことを言われたんですよねえ~!僕は命を懸けた研究者ではないし、やっぱり襲われることはイヤだし恐ろしい。でも、自然愛好者としてのツキノワグマへの興味と好奇心は大いにあるので、襲われないような対策を十分取ってから、このような場所に出かけてゆくのである。(もちろん米田さんも十分な対策は取っているし、気構えみたいなつもりでの言葉だと思う)
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僕は細かく記録を取っていないので、何回クマと遭遇(見た)したかは正確には分からないけれど、今まで30頭以上のクマの写真を撮っているし、写真を撮れなかったケースのほうが圧倒的に多いので100回くらいはクマを見ていると思う。
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だから、「チバさんはクマが怖くないのでしょう?」と良く言われるけれど、そんなことはない。知れば知るほど怖くなる。
でも、闇雲に恐れる必要はないと思っていて「クマのことを正しく知って、正しく怖がる」ことが大切だと思っている。
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ツキノワグマは船形山近辺の山や森、山沿いの林だったら何処にでもいる(可能性がある)し、道路わきにいるツキノワグマは車が近づくと藪にひょいと身を隠し、車をやり過ごし活動を再開するケースは稀ではない。そして、ツキノワグマは野生の感覚で、先に人間を察知して逃げて行くと言うのは、必ずしも当てはまらないと思う。→こちらが先に見つけ近づいて来るクマに声を掛けたら、やっと僕らに気づきビックリして逃げ出したような、ぼーっとして歩いていたクマもいるのだ。
黎明薄暮に限らず、24時間(真昼間でも)普通に活動している。
あと、子連れのクマは子グマを守ろうと母グマが襲ってくるから危険と言われるけれど、どちらかと言えば危険なのは親子で冬ごもりを終え、夏の親離れを前にした2年仔の子熊のほう。本来、肉食獣であるツキノワグマは自立する前に獲物を獲る練習をするのだそうだ。この期間を野生化訓練期間と言い、下半身に噛みついてくるケースが多いので大量出血による重大事故につながりやすいと米田所長に聞いた。

その他、僕が今までの経験と見聞きしたツキノワグマに関する事柄は書き切れないほどある。

帰り道で出会ったフキノトウを採っていたオバサマ二人に声を掛けたら「えー!こんなところにもクマが出るんですか~!?」って驚いていたけど、当たり前にいますから。

野生動物との出会いを趣味と言うか楽しみに山のほうに通っている僕が、次の被害者にならないようにしたいと思っている。
万が一の際に備えて、首筋を守るために無駄に大きなザックを背負いヘルメットも被って、またクマを探しに行って来る。


Commented by aoe86 at 2018-04-10 20:22 x
クマさん健在ですね。自分は車で現在ワイナリーになっている辺りを走行中に目の前をクマさんが横切ったのが初対面でした。世の中にこんなダイナミックな存在がいるんだ、と思うととともに、そのような存在を育んでいる船形山周辺ってなんて豊穣なんだろう、と妙に感心したのを今でも忘れていません。引き続き安全にご留意されてクマさん達の動静を垣間見せていただければと思います。
Commented by mt1500funagata at 2018-04-10 21:55
> aoe86さん
トレイルカメラに写ったのは、昨年TVに取り上げられたデカグマだと思います。冬ごもりを終えたばかりなのに丸々と太っていますね!今回の動画が今週の金曜日18:15~ミヤテレのローカルニュースで資料映像として使われる予定です。
同場所に継続設置中ですから、ほかのクマも撮れればいいと思っています。片腕とか親子だったら良いのですが。
Commented by mt1500funagata at 2018-04-13 05:04
本日、予定されていた資料映像としてのテレビ放映ですが、番組編成の都合上なくなりました。
Commented by akidai at 2018-06-03 13:05 x
こんにちは。私は趣味で野生動物の写真を撮ってとります。主にサル、カモシカですが。先週、長野県の山中を歩いていたところ、初めてクマと出会いました。体の大きい成獣で、距離にして15㍍ほどでした。しかし、向こうも私に気付きすぐ逃げたことと、私自身いざ対面すると怖くてカメラを構えられなくて撮り損ねてしまいました。なかなか会えるものじゃないですよね。
クマを探すときはやみくもに山林を歩くより、獣道などいそうな場所にあてをつけて待ちつづけるスタイルの方が良いのでしょうか?助言いただければ幸いです。
Commented by mt1500funagata at 2018-06-03 21:43
> akidaiさん
コメントありがとうございます。
僕は今まで100回以上クマと遭っている(見ている)と思いますが、写真を撮れるのは3回に1回くらいの割合だと思います。コメントのように、山中で偶然出会ってしまったケースも相当数ありますが、そんな時は写真どころではないというのが正直なところです。写真を撮りたいのであれば、狙って撮りに行く。僕はクマの生息密度が高い地域に、週に複数回通っています。
本記事の写真は無人カメラです。これだけ通っている訳ですから、毎年同じ時期に同じ場所にミズバショウを喰いに来るというのは、わかってきますから無人カメラを仕掛ければ写って当然と言えるでしょう。
写真を撮るクマを見つけるのは車の中からの場合が多いです。何度も何度も同じ場所に通い、クマを見た場所や痕跡を観察していれば、季節ごとにいそうな場所も分かってきます。時速10㎞以下で走行し、クマのいそうな場所ではカメラを構えて樹間に目を凝らします。そして、クマより先にこちらが見つけた時には写真を撮ることが出来る確率が高くなります。
今までの蓄積をコメント欄で一口に表すのは難しいですが、僕に言えることは、回数と経験だと思っています。
Commented by akidai at 2018-06-03 23:18 x
mt1500funagataさん

ご丁寧にお返事いただきありがとうございます!
とても参考になりました。山へ行っては何も動物が撮れない空振りを繰り返し、やみくもに探し回っているだけではいけないと感じ始めていた時にmt1500funagataさんの助言を聞けてうれしいです。安全を十分確保した上で頑張って撮りたいと思います。
ありがとうございました。また今後ともよろしくお願いいたします。
by mt1500funagata | 2018-04-08 23:02 | 野生動物との出会い | Trackback | Comments(6)