撤退は正解だった。

暮れの休みの一夜を船形山中腹の升沢小屋で過ごすつもりだった。
昨年は上手い具合に升沢小屋に泊まることが出来たけれど、今年は升沢小屋どころか三光の宮までも行くことが出来なかった。

12月30日の明け方、風の音で目を覚ました。升沢小屋に泊りに行くつもりの僕は少し心配になった。升沢小屋まで行けるだろうか?
まあ、行けるところまで行ってみよう。家を出たのは、かなり日が高くなってからだった。

c0294658_22301648.jpg
入山届所の沢渡(さわたび)は降雪。里は青空が広がっていたけれど向こうの山のほうは真っ白。
例年と比べて異常なくらい積雪が少ないけれど、やっぱり、冬です。

旗坂キャンプ場に向かう僕の車の前に、何か獲物をくわえたキツネが飛び出して来た。慌てて車を止める僕、一瞬立ち止まり踵を返して森へ駆け込むキツネ。乾いた冷たい吹雪の森で営まれている野生を垣間見た瞬間だった。

c0294658_22303124.jpg
旗坂キャンプ場も雪は異常に少ない。でも降雪。

登り始めは快調だった。先行者が一人いてスノーシューの踏み跡をたどった。
c0294658_22304848.jpg
旗坂平、降雪。
c0294658_22311247.jpg
一群平、降雪。
c0294658_22325700.jpg
金崎平、降雪。

じきに先行者とスライドしトレースも長くは続かなかった。さあ、これからは深雪の一人ラッセル。積雪は50cmから1mくらいなのだが、12月の新雪は丸々足が沈んでしまう。先行者も「やんだぐなって」引き返して来たのだろう。気持ちは十分わかります。

鳴清水付近からは吹雪。
小荒沢の谷筋に沿って吹き抜ける風が地吹雪となって容赦なく襲い掛かって来る。

前に進めない。
5歩進んで10歩分の時間立ち止まる。かなりの時間をかけてやっと標識20番まで来れば風は少し収まったものの雪は深くなった。

この調子では、升沢小屋まで到達は無理。つーか「やんだぐ」なりました。
せめて三光の宮までなんて気持ちもサラサラないです。

c0294658_22353328.jpg
標識17番でUターン。
秘密のビバーグ地点へと向きを変えた。
「やんだぐなった」あたりで撤退するのがちょうど良い。

c0294658_22364798.jpg
二度目の標識19番を過ぎた後、恥ずかしい話少しルートロスしてしまった。フードをかぶり吹雪に顔を伏せて歩けば視界は10mかそこら。気がつくと僕は深く落ち込む谷の崖っぷちに立っていた。あれ!? フードを上げて周りを見回すと谷の向こうに尾根がうっすらと見える。頭の中で地形図が展開する。あー、この沢はアノ沢だ。GPSを取り出そうかとも思ったけれど、僕の記憶のほうが早かった。吹雪の切れ間、左手に見覚えのある二つの小高いコブが見えた。間違いない、知らず知らずに右に寄って歩き過ぎたようだった。方向を修正し歩き直したら真っ直ぐ標識23番に行き着いた。

あとは秘密のビバーグ地点へと一直線。
明るいうちにツェルトテントの設営は終わった。
c0294658_22410215.jpg
ホッと一息coffee brake。
撤退は正解だった。
この冬初めてのラッセル登山で、両足のアチコチが痙攣起こしたように痛みが走った。

薄暗くなってきたけれどまだまだ夜は長い。
c0294658_22421659.jpg
バーボンのお湯割と星野道夫の本で、厳冬の宵の時間を過ごそう。

真っ暗になってきたら、そろそろ晩めしの準備。
c0294658_22433581.jpg
レトルトの赤飯とボイルウィンナーに味噌汁。ひとつのコッフェルでお湯を沸かすだけの簡易版。
一人の時はこんなもんです。

調理に火を使うとテント内の気温はすぐに上昇する。
+2℃になった。寒くない。普段過ごしている自室の気温と3度くらいしか変わらない。僕の部屋にはエアコンもストーブもない、窓は開けっ放し。ほぼ外気温とそう変わらない中で過ごしている。

多くの人が原発反対を叫び、地球温暖化を憂いている。エアコンの効いた涼しい部屋で・・・ストーブ焚いた暖かい部屋で・・・。

厳冬期の雪山でテント泊とかしてみたらどうだろう?身体も慣れるし寒くない重ね着の知恵も付くんじゃない?

夜中も寒くて目が覚めることはなかった。
c0294658_22452208.jpg
テント内の温度は0℃前後だったけれど、それなりに着込んで潜り込んだシュラフの中は暖かい。

夜明け前に起き出して空を眺めれば、雪の付いた樹木越しに北斗七星が輝いていた。日の出に合わせて写真を撮ろうと思って、場所を探しているうちに空は曇り始めた。

沢のほうに行ってみた。
空が桃色に染まったのは、ほんの僅かな時間だけだった。

一回りウロついたら、テントに戻って朝飯の準備。
c0294658_22461555.jpg
あれっ?昨夜と同じ?
そう、同じ。

朝飯の後はまたシュラフに潜り込む。
この時間が堪らない!

さて、そろそろ帰る準備をしよう。

平成28年最後の登山を船形山で終えた。思惑通りには行かなかったけれど、ひとり山中で過ごす夜を静かに楽しんだ締めくくりだった。


今年一年ありがとうございました。
c0294658_22471304.jpg
平成29年が皆様にとって良いお年になりますよーに。


-

[PR]
by mt1500funagata | 2016-12-31 22:52 | 船形山界隈 | Trackback | Comments(0)

薬来山に登って来た。
c0294658_22421664.jpg
一般的な登山道はスキー場脇の大鳥居をくぐり階段を登るのだけれど、今回は反対の西側の尾根を登った。

c0294658_22583295.jpg
暖かい日が続いたせいで積雪はほとんどなかった。せっかく冬に登るのだから多少の積雪は期待していたけれど・・・

c0294658_23060592.jpg
積雪は冬を感じさせない、気温も冬を感じさせない。
西から吹いてくる風だけが冬を感じさせた。

このルートは、僕が山登りを始めた頃からお世話になっている加美町に住むIさんのお気に入り。若い頃は盛んに沢を登り、厳冬期の厳しい山にも登るIさんは一人でふらっとこの道を歩く。Iさんにとって薬来山は身近な愛着のある山なのだろう。僕にとっての七つ森周辺の山と同じように。
c0294658_22484035.jpg
朝起きれば薬来山はそこにある。薬来山を眺めながら出勤して、帰りは薬来山が迎えてくれる。小学校の頃から学校登山で登り、元旦登山は毎年行われる。
僕は宮城の山に愛着を持っています・・・でも、薬来山に対する愛着心は加美町に住まうIさんとは比較にならない。

c0294658_23072351.jpg
山頂が近づいて来た。相変わらず西風だけが冷たい。
下部では、ナラ枯れの原因を作る「カシノナガキクイムシ」の発生予察調査のための目印となるピンクのテープが所々にマークされているけれど、この辺は赤布もなく静かな雑木林が広がっている。

地形図とコンパス持って歩いてみたらいかがですか?簡単なルートファインディングの練習になると思います。薬来山は独立峰なので、もし分らなくなってもとにかく上を目指せば山頂に出るし、下に向えば道路が一周しているので彷徨してしまう心配はないです。
c0294658_23471141.jpg
僕もGPSの軌跡は取っていたりするのですが、公開しないのは軌跡を辿る歩き方はやめたほうが良いと思うからです。地図読み出来ずにGPSに頼って積雪の船形山に登ってきて、結局迷ってしまった人ととんでもない所で出会ったこともあるし、5月の連休の頃には三光の宮~升沢小屋間で迷った人を引っ張ったことも1度や2度ではない。僕もGPSで確認はするけれど、頼るのは道具。GPSを安全の為に持つのは良いことだけど、頼るのはいかがなことか?と思っています。
c0294658_00212272.jpg
里山のGPS軌跡の公開について、ついでにもうひとつ言わせてもらえば、心情的な部分ですかね?薬来山の一般的なルートではないこのルートをほかの町からやって来た僕が赤線引っ張った地形図をネットで公開すれば、静かな山歩きを楽しみたいと思っている前述のIさんらは快くは思わないだろうと思う。
c0294658_00251735.jpg
登山道に残された沢山の動物の足跡を見るのは楽しい。
c0294658_00310801.jpg
北峯社殿の屋根にはテンの足跡が残っていた。屋根に上って僕らが近づいてくるのを見張っていたのか?

今日の薬来山は僕らの貸切だったようだ。

c0294658_00403384.jpg
いったん下山してメシの場所を探す。
荒沢湿原の奥の林道も積雪が少ないので、結構奥まで車を乗り入れることが出来た。
c0294658_00450154.jpg
麓は風もなく穏やかな冬の晴れ日。

荒沢湿原の観察館のウッドデッキに、森のレストラン「ヒゲパクリ亭」がオープンした。
c0294658_00480656.jpg
本日のメニューは「焼きそばナポリタン」
船形山を根城にする、ヒゲの写真家桜井氏の得意メニューのパクリであります。
先々週ごちそうになって、すごく美味かったのでパクってみた。
安くて簡単で美味い!タバスコをたっぷり加えれば身体も温まる。
c0294658_00543691.jpg
冬だからこそ野外料理。
風さえなければ寒いのは平気。
未だに僕の部屋には暖房がない、窓を開けっぱなしで眠る。

厳冬期に向けて耐寒訓練してますかあ~?


-



[PR]
by mt1500funagata | 2016-12-24 22:35 | Trackback | Comments(5)

今朝も雪であります。

c0294658_22471837.jpg

今週もモノクロームの風景を求めて山へ向かおう。

目的地は升沢しょい滝。
僕は山が好きだけれどピークハンターではないので、目的地は山頂に限らない。森の泉であったり沼であったり滝だったりする。

升沢遊歩道の割山大滝は多くの人が訪れるけれど、廃道となった旧遊歩道上にある「しょい滝」を訪れる人は滅多にいない。

c0294658_22560792.jpg
しょい滝入り口の目印は三本松。

この松の奥に進み・・・
c0294658_22594088.jpg
何となく道っぽい林の中を荒川へ向かうと
c0294658_23012596.jpg
川へ下りる崖っぷちに道が見える。
古い堰堤の少し上流部が渡渉点。
c0294658_23034174.jpg
手前に見えているのは、かつてこの場所に架かっていた橋の残骸。

25~6年前までは、旗坂キャンプ場からこの橋までが升沢遊歩道だった。
僕も渓流釣りを覚えたての頃の、この橋を渡った遠い記憶が残っている。

c0294658_23103494.jpg
荒川を無事に渡り終えれば、正面に「しょい滝」の姿を見ることが出来る。

c0294658_23140855.jpg
しょい滝が全容を現す。

c0294658_23144783.jpg

御神体として祀られている滝も多いけれど、この滝は古くから山深い升沢集落の人々の生活と関わってきた滝なのである。

c0294658_23184575.jpg
山と高原地図に記載されている「しょうゆ滝」という滝名は、何を根拠に記載したのかは分からないけれど、正しくは「しょい滝」

c0294658_23232335.jpg

船形山が舩ケ峠と呼ばれ山形側へ往き来する際の番所だった早坂林右衛門邸、その現当主である何代目かの林右衛門さんからも直接お話を伺った。

・・・昔から「しょい滝」しゃ、ずんつぁんだぢもみな「しょい滝」つってだんだよ。「しょい」は「背負い」しゃ。滝の上の三本桜沼あだりで、いっぺ炭焼ぎすったのさ。・・・

c0294658_23362357.jpg
炭を背負って登り下りしたから「しょい滝」

そんな山村の生活と関わってきた滝だけれど、ある理由から僕にとっては神様が棲まう滝なのである。

c0294658_23414122.jpg
この滝を訪れるなら冬に限る。
c0294658_23433416.jpg
きりりと凍み渡った空気と水、そして氷と黒い岩盤。
c0294658_23473784.jpg

もし、あなたがこの滝と向いあったならば、あなたは何を感じ何を見るのでしょう?





[PR]
by mt1500funagata | 2016-12-17 22:33 | Trackback | Comments(0)

鈴沼は吹雪模様

明け方、里に降った雨も山では雪だった。
c0294658_17570980.jpg
僕は週末に降る雪を待っていた。

鈴沼に降る雪、小島のナナカマドの枝に付く霧氷を期待して山へ向った。
 
小荒沢林道の入り口から歩く覚悟で出てきたのだけれど、思いのほか積雪量が少なく郡境(ぐんざかい)の十の字石入口まで車を進めることが出来た。
郡境までは日が当たったブナ林が輝いていたけれど、車を降りた途端に吹雪いてきた。
片道およそ5kmの林道を風に逆らいながら黙々と歩く。
c0294658_18084905.jpg
こうして雪を踏みながら鈴沼を目指せるのは、あと何年くらいかなあ?なんて事を考えながら歩いていたら、7~8年前の事だっただろうか?酒席での故I先生の言葉を思い出した。I先生ってのは、R山岳会の重鎮で県議会議員も長く務められていた方で、当時90歳代の後半でまもなく100歳に手が届くほどだった。歓談のなかで誰かが言った。「もうそろそろ70歳近いので・・・」概ね100歳のI先生が一喝「60代の若造が何を言っておるか!」うーん、僕なんて鼻タレ小僧だ。
平成4年10月、I先生はブナの会の代表者を伴って、当時の林野庁長官へ船形山のブナ林の保全を求め直談判を行った。僕らもハガキ作戦と称して署名ではなく、直接林野庁長官宛に大量のハガキを送り船形山のブナ林の保全を訴えた。
一時は伐採の危機に瀕した船形山北面の朝日沢源流部のブナ林が原生の姿を留めているのは故I先生のご尽力の賜物なのである。

c0294658_18334880.jpg
大滝キャンプ場は雪に覆われ、鈴沼への道では膝まで雪に潜った。

c0294658_18391194.jpg
鈴沼は吹雪。
c0294658_18404229.jpg
墨絵のような鈴沼のほとりに佇んで侘び寂びに浸る・・・なんて風流なことをしてるような状態じゃなかった。
寒いーーです。
c0294658_18472637.jpg
全面氷結する前の鈴沼を見ることが出来て良かった。
小島のナナカマドはもうじき深い雪に埋もれる。
氷の下ではイワナたちがじっと耐えて春を待つ。
満月の晩には雪原となった沼の上を月明かりに誘われたウサギが跳ね回ることだろう。
流れ込みの上流の梅花藻は凍ることなく冷たい水に揺れているだろう。
c0294658_19474296.jpg
モノトーンの鈴沼。
頭の上を冬の風が大声で唸りながら渦巻いていた。

c0294658_19530813.jpg
車に戻ればボンネットに10cmほど雪が降り積もっていた。
行きのトレースは完全に消え、5時間半、往復10.5km全行程ひとりラッセルの一日でした。


-

[PR]
by mt1500funagata | 2016-12-10 20:10 | 鈴沼 | Trackback | Comments(2)

先週登った高倉山から栗駒山がきれいに見えていた。
と、言う訳で今度は栗駒山から高倉山を眺めに行ってきた。
c0294658_20554670.jpg
雲ひとつない快晴の栗駒山。
c0294658_20560270.jpg
潅木に付いた霧氷がイイ感じの山頂だったけれど、さすがに標高1626mの山頂は風が強い。長居をしたい場所ではなかった。

早池峰山や焼石連峰から岩手山、山頂からは鳥海山も見えていた。
c0294658_20561587.jpg
コンデジで撮った写真では分りにくいけれど、北泉ケ岳と泉ケ岳のわずか左手に高倉山と東こぶも確認できた。

こんな青空の下で東北の名峰を眺められたことはもちろん嬉しいし楽しいこと。
でも、かすかに見えるあのラインを先週は歩いてあそこからヤッホーしたんだよなあ~って思い出しながら眺めるちっぽけな高倉山に僕は感動を覚えるのだ。


-

[PR]
by mt1500funagata | 2016-12-03 21:22 | Trackback | Comments(2)