人気ブログランキング | 話題のタグを見る

七つ森、信仰の源流を探る

七つ森、8峰全てを一望できる場所は少ない。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_19074583.jpg
昭和50年に編纂された「大和町史」の中、「黒川郡の神々」と題された一文によれば、
七つ森が大森山(笹倉山)を加えて七つとして数えられるようになったのは、伊達四代綱村の頃(西暦1700年前後)。中国の九魏峯になぞらえて七魏峯と称するようになったという。=注)魏の本当の文字には山冠がつく=
現在山頂に祀られる薬師像は近世のものであるが、(宝暦12年=1762年、伊達氏侍臣、八巻景任父子による)七つ森が霊異の山として黒川郡の人たちに崇められていた歴史は確実に古代までさかのぼる・・・。

そして、その一文には、古代からの神体山としての存在、さらに山中にある岩座(いわくら)つまり神座(かぐら)に関する記述もあった。

確かめなければならないと思った。その岩座(神座)に触れてみたいと思った。

しばらく前から、資料を集め現地の偵察を繰り返していた。

七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_19075891.jpg
七つ森の麓にある、石神山精(いわかみやまずみ)神社。

宮司の吉田さんからもお話を伺った。
「おらいは、もともと修験なのっさ。出羽三山で修行して最後に京都の聖護院さ行って法印をもらうのっさ」
延喜式内社の全くの神社だとばかり思っていたのだけれど、実は修験本宗の流れを汲む修験だった、七つ森は修験の山だったのである。境内にある湯殿山の石碑の意味が分った。
「七つ森の倉は岩座の座(クラ)神座の座(クラ)っさ」
僕は〇倉山の岩座の前に立ちたいと思っているのですが、そこが御神体山の神座なのですか?と問うた。
「斜面が急だから落ち葉で滑らないように気をつけなさい」
僕の問いには、はっきりと答えずに笑顔で言葉を煙に巻いた。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_19081541.jpg
Wikipedia七つ森に記載されている「山の名称には共通して倉の字が入っているが、これは岩を意味している」という解説は正しくないということですね。どんな参考資料よりも吉田宮司の口から発せられた言葉が意味を持つ。さらに、新七つ森と旧七つ森の比較表なども載せているけれど、本来、旧七つ森なんて存在しない。笹倉山を入れて七つと数えた時から「七つ森」となった訳で、それ以前は「七」と数を合わせる概念がなかったと言えるのである。(僕の考察です)

七つ森に関するうん蓄を続けようとすれば、数十ページにわたる長文になってしまいそうです。この辺で切り上げましょうね。


昨年、面白山大権現の御神体探索をご一緒した、ハンドルネーム:マロ7さんご夫妻とヨシコさんを誘って、いよいよ七つ森の岩座神座へと向った。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21340694.jpg
どこへ行くの?七つ森です! クライミング道具じゃないっすか?そうです!

七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21422905.jpg
いままでの偵察の結果、下から藪をこいで行くのは相当困難と判断して、上から目指すことにした。いったん山頂に登って目指す岩座まで下降するのだ。
しばらくは木立ちを頼りに慎重に下る。しかし、それも長くは続けられなかった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21470477.jpg
ザイルを出して懸垂下降。50mザイルを目いっぱい使った。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21493951.jpg
最初の岩座のテラスに立つ僕。触れるだけで岩は崩れてくる。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21512272.jpg
今にも崩れそうな岩がハングしている。長居したい場所ではなかった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21525620.jpg
テラスからの下降にもザイルを使用した。急ですよ!カラ身じゃ行けない。
テラスから降りて今度は急な斜面をトラバース。

七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_21550573.jpg
目指していた岩座。
ここが古代クラ山信仰、御神体山の神座なのであろうか?
確かめる術はないのだけれど、中世以前の人々が神の座と考えるにふさわしい岩場であった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22015057.jpg
岩に触れてみる。 
毎朝毎晩眺めている七つ森の懐の真ん中に抱かれているような感覚を持った。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22074704.jpg
こうして見上げてみると、古代の人だったら、いや現代人の僕であってもここには神様がいるんだろうなあ~って感じる場所だった。

それから、それから、、、!
今まで、どんな書物にも書かれていないし誰からも聞いたことがなかった凄いものを発見した。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22140232.jpg
岩場のトラバース中に、
「あれー!あんな所に洞穴みたいのあるよー」とヨシコさん。
「行ってみるしかないすぺー!」とマロ7さん。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22163659.jpg
洞窟だった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22172769.jpg
高さ1mちょっと、奥行きは3~4mくらいか?
平に固められた洞窟の奥には、ヤマグワの種が混じったツキノワグマの糞が残されていた。入口近くの右手には30~40cmくらいの棚のような下が平らな窪みがあって、火を焚いた痕跡とか岩を削った痕跡とか人の手が関わったような跡がないかを探したけれど、見つけることは出来なかった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22232512.jpg
床面はまっ平で、座ったり寝たりするのに充分すぎるほどの快適な洞窟の内部だった。岩がゴツゴツした壁面や天井面と見比べると、不自然な程まっ平な床面。七つ森修験の行者が修行した洞窟のように思える。もし、そうだとして、そうでなかったにしても、この洞窟に僕らの前に人が入ったのはいつのことだろう・・・なんて考えると気持ちの高まりは抑えきれないものがあった。皆おなじ気持ちだった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22304681.jpg
七つ森の山中に、こんな場所があったなんて!
多くの人が訪れる身近な里山ではあるけれど、深い興味を持って深く歴史を調べ深く山中に分け入れば、こんな楽しみ方も出来る。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22351342.jpg
累々と広がる落石の斜面をトラバース気味に下山した。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22352990.jpg
七薬師掛けは、僕は何度か行っている。
七峰を登っては下りまた登るという大変な山行である。
さらに今日の山行で七つ森の七掛けという横軸的とも言える平面的な広がりに、深さという縦軸も加わったように感じた。

興味のある方は、県立図書館に資料があります。それらの資料を紐解いて訪れてみてください。そこから始めるのが一番面白いと思いますよ。


興味深いことが多くて時間を忘れ、昼飯は陽がとっぷりと傾いた頃になってしまった。
七つ森、信仰の源流を探る_c0294658_22462697.jpg
三つめのすず沼からクレソンを頂いて、甘い水の泉のほとりでクレソン鍋を囲んだ。


今までで、一番面白い七つ森でした。


-

Commented by utinopetika2 at 2017-01-08 18:45
さすがですね。
人工の洞窟なのでしょうか?
Commented by tabilogue2 at 2017-01-08 22:32
今年も 探検が続くようで・・・楽しみですね
春の権現沢清掃まで 飽きることありませんねw

15日は 引っ越し作業の日程が重なりました ごめんなさい
Commented by mt1500funagata at 2017-01-08 23:29
> utinopetika2さん
七つ森もこうして見ると奥が深いですね。
人為的な痕跡は分かりませんでしたが、土を入れて固めたような平な床面は天然の洞窟にしては、不自然な感じでした。
Commented by mt1500funagata at 2017-01-08 23:35
> tabilogue2さん
山もただ登るだけでなく、様々な探究心を持って向かい合うと奥行きを感じますね。
次はこの岩場のクライミングを考えています。古代信仰とクライミングの融合がテーマとなります。

15日の件、了解です。別の機会にご一緒しましょう。
by mt1500funagata | 2017-01-07 23:00 | 七つ森界隈 | Trackback | Comments(4)