2016年 03月 27日
春の足音と子グマの声
今日は、春の足音を聞くために森へ向かった。
訪れる人も無いミズバショウの小さな群落のある森。
そろそろ起きだしたツキノワグマはミズバショウの株を齧りに来ただろうか?
今年の春は早足でやって来ていて、既にぽつりぽつりと花が咲いていた。
もうじききれいな紫の花を咲かせる、咲かせたところで誰も見てくれない、きれいだと言ってもらえる訳でもないのに。
光がほしくて雲の動きを見上げていたら、森の上をオオタカが縦断していった。
カメラを手に、ずーっと空を眺めていたら、今度はクマタカが現れた。さっきのオオタカより遠くだったけれど、ふた周りくらい大きいってのは充分見て取れた。
オオタカって蒼鷹なわけで、大きいから大タカではない。クマタカは角鷹(隈鷹)なわけで、熊みたいだから熊タカってことではない。
森の中に身を置いてずっと空を眺めていたから二種の猛禽を見ることが出来た。
森の中に身を置いてずっと森を眺めていたらツキノワグマを見ることは出来るだろうか?
この沼の畔の森にはツキノワグマが棲んでいる。
見晴らしの良い切り株に腰をおろし、身を置くことにした。
現れてくれるだろうか?
ツキノワグマのほうが僕を先に見つけたようだった。
鳥の声を聞きながら10分くらい経ったころだろうか、林の向こうの丘のほうから人の声が聞こえたような気がした。
その声は一気に大声に変わった。ミャオーンとギャオーンとガオーンを足して3で割ったような声。
あー、ツキノワグマの子どもが母グマを呼ぶ声だ・・・。
冬ごもりの穴からまだ離れられない子グマが穴を背にして首を伸ばして上を向き頭を左右に振りながら、声を上げているのだろう。
「おがーさーん!だれか来たみたいだどーー!おがーさーん!」
鳴いている姿を想像してみると、ギャオーンガオーンって声がそう云っているように聞こえてくる。
子猫の鳴き声とは比べ物にならない大きさで、たくましさを持った太い鳴き声だけれど、その声は、とても可愛らしい声だった。
合計2時間半ばかり、この森を眺めて過ごした。声は数回聞いたけれど結局姿を見ることは出来なかった。
帰途、田圃の土手も春だった。
スプリングエフェメラルなんて洒落た呼ばれ方はされない。
でもイイよー。田舎の春ってカンジでイイよー。
姫踊り子草・・・なんて素敵な名前なんでしょう!
イヌノフグリ・・・なんて可哀想な名前なんでしょう!
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少しずつ日が長くなって行く。春が近づいて来ているのを感じます。僕が山や森に行くのは、山頂に立つことだけが目的ではない訳ですね。山や森、その中で息づく動物たちの気配を感じに行くのですね。
今年も水芭蕉をかじりに来るツキノワグマと会えるのを楽しみに春を待っています。