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やまなし

小さな谷川の底を写した何枚かの写真です。
    六月一日
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「クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳ねてわらったよ。」
「それなら、なぜクラムボンはわらったの。」
「知らない。」
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つうと銀いろの腹をひるがえして、一匹の魚が過ぎて行きました。
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「クラムボンは死んだよ。」
「クラムボンは殺されたよ。」
「クラムボンは死んでしまったよ・・・・・・。」
「殺されたよ。」
「それならなぜ殺された。」
「わからない。」
魚がまたツウと戻って下流のほうへ行きました。
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「クラムボンはわらったよ。」
「わらった。」
にわかにパッと明るくなり、日光の黄金(きん)は夢のように水の中に降って来ました。
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波から来る光の網が、底の白い磐(いわ)の上で美しくゆらゆらのびたりちぢんだりしました。

「お魚はなぜああ行ったり来たりするの。」
「何か悪いことをしているんだよ。とってるんだよ。」
「とってるの。」
「うん。」
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そのお魚がまた上流(かみ)から戻って来ました。
今度はゆっくり落ちついて、ひれも動かさず、ただ水にだけ流されながら・・・。
その影は黒くしずかに底の光の網の上をすべりました。
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「お魚はどこへ行ったの。」
「魚かい。魚はこわいところへ行った。」
「こわいよ。」
「いい、いい、大丈夫だ。心配するな、そら、シロヤシオの花が流れてきた。
  ごらん、きれいだろう。」
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光の網はゆらゆら、のびたりちぢんだり、花びらの影はしずかに砂をすべりました。

前回に続きパクリ、宮沢賢治「やまなし」の一節です。
大人になって宮沢賢治を読み返すと、童話じゃないよなって思います。
会話をしているのは蟹の子供らです。魚を捕ったのはカワセミです。
でも、この物語の中のどこかに自分がいる。
傍観し怯える蟹か?
悪いことをして行ったり来たりしている魚か?
その魚を捕ったカワセミなのか?

クラムボンを殺したのは僕なのか?
「せしうむ」か?
いや、クラムボンこそが僕らのことなのか?


釣竿もって船形山のそこいらへんに行って歩いて来たのですが、「やまなし」を想うと、
なんか、イワナを釣って食べるって気にならなくて、写真だけになっちゃいました。

途中ヌメリツバタケを見つけて喜んだり
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これぞ、ホントの流水麺って、そばを沢水に晒したりして
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「洋風冷やし流水そば」を作って食べて・・・。
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そうそう、キノコソテーもね!

森の中の沢で初夏の一日を過ごしてきたのです。
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ちょっと写真も撮ってきました。
by mt1500funagata | 2013-06-01 23:00 | イワナ&沢 | Trackback | Comments(0)